学長メッセージ
- 世界は全部つながっている -
総合研究大学院大学は、全国に散らばる国立の研究所や博物館と、葉山にある本部とから成り立っています。一つのキャンパスにみんながまとまっているわけではないのですが、それぞれの研究所などが、独自の大型装置や膨大な資料などを持っており、そこで、最先端の研究がなされています。そこに本学の専攻が置かれているのですが、専攻はこれまで、文化科学研究科、物理科学研究科、高エネルギー加速器科学研究科、複合科学研究科、生命科学研究科、先導科学研究科の、6つの研究科に分かれていました。2023年度からは、それらを一研究科、一専攻にし、それぞれの専門分野の研究を、コースという形で一律に並べることを検討しています。
また、これまで本学の大学院教育に参画していなかった、総合地球環境学研究所と国立国語研究所も、今回の構想では新たに加わる予定です。
大学院には研究科を置くことを常例とする、という法律があります。大学の運営にとっては、ある程度のまとまりを作った方がうまくいくのも事実です。それでは、どんな専攻をまとめて研究科を作るか? これまでの分け方は、学問分野の特徴に基づいたものでした。理学系の学問と人文系の学問は、研究目標や研究手法、発表の仕方などの点でずいぶん異なります。また、同じ理学系でも、物理科学系と生命科学系では研究対象が異なるため、背景となる知識が大幅に異なります。そんなわけで、学問分野別に研究科のまとまりを作って、これまでの大学運営を行ってきました。
しかし、このような旧来の分け方をずっと続けていてよいのでしょうか? いろいろな理由があって異なるカテゴリーのものを作ってしまうと、それらのカテゴリー間のつながりの認識が時間とともに薄れ、カテゴリーの中だけでの営みが重みを増してきてしまいます。でも、世界は全部つながっていますし、本当に解明したい事柄、解明するべき事柄は、既存のカテゴリーの中だけにはおさまっていないかもしれません。また、伝統的な考え方や研究手法だけで、研究を進めるには限界があることも事実でしょう。これからは、既存のまとまりにとらわれることなく、新しい試みに挑戦していかねばなりません。
そんな活力のある研究者を育てたいと思います。実際に、既存の枠組みを超えて新たな研究を展開していくのは、かなり困難なことです。それでも、分野間の壁は低いのだ、というメッセージを鮮明にし、一人でも多くの院生が(先生方も!)、そのような挑戦に取り組めるような環境作りをしたいと思います。一研究科への改変がその一助となればと思います。大学の仕組みや組織を変えていくことで、そんな研究者の育成が少しでも加速していくことを願ってやみません。
