ALMA 望遠鏡で解き明かす95 億年前の銀河団銀河の星形成活動の分布
February 1, 2023
採択年度:
program year:
2022
天文科学専攻
Astronomical
池⽥遼太
天文科学コース
High-resolution ALMA Study of CO J=2-1 Line and Dust Continuum Emissions in Cluster Galaxies at z=1.46
掲載誌:
journal:
The Astrophyscial Journal
発行年:
publish year:
2022
DOI:
https://doi.org/10.3847/1538-4357/ac6cdc

銀河は周囲の「環境」(=銀河同⼠で密集して存在しているかどうか)によってその性質(形態や星形成活動等)が異なることが知られています。銀河が密集して存在している領域を銀河団と呼びます。しかし、なぜ・どのように「環境」が現在の銀河の性質に影響しているかはわかっていません。天体から発せられる光は光速という有限の速さで我々に届くため、遠くの銀河ほど過去の年代の銀河を観測していることになります。銀河の「環境」依存性の謎を紐解くには、遠⽅、すなわち過去の形成途中の段階にある銀河団の銀河を観測することが⼤きな⼿がかりとなります。
我々は約95 億年前の宇宙に存在する銀河団銀河を17 個観測しました。これらの銀河は星形成の材料となる分⼦ガスを多量に含み、かつ星形成を活発に⾏っていることが知られていました。今回我々はALMA 望遠鏡の空間を細かく観測できる能⼒を活かし、星形成活動と分⼦ガスの詳細な分布を調べることに成功しました。星形成が活発な領域と分⼦ガスの分布を半光度半径(=全体の明るさの半分を囲む半径)によって特徴づけたところ、星形成が活発な領域は銀河の中⼼に集中しており、⼀⽅で分⼦ガスはその約3 倍のサイズを持っていたことを発⾒しました。これは銀河の中⼼部分で最も恒星が効率的に形成されていることを⽰唆し、現在の銀河団銀河の恒星成分の形態と整合的な結果です。
今後は、銀河に存在する分⼦ガスの動⼒学的な情報を⽤いて、銀河内の恒星成分がどのように分布しているかを定量的に調べることを計画しています。
書誌情報
- タイトル:High-resolution ALMA Study of CO J=2-1 Line and Dust Continuum Emissions in Cluster Galaxies at z=1.46
- 著者:Ryota Ikeda, Ken-ichi Tadaki, Daisuke Iono, Tadayuki Kodama, Jeffrey C.C. Chan, Bunyo Hatsukade, Masao Hayashi, Takuma Izumi, Kotaro Kohno Yusei Koyama, Rhythm Shimakawa, Tomoko L. Suzuki, Yoichi Tamura, and
Ichi Tanaka - 掲載誌:The Astrophyscial Journal
- 掲載年:2022
- DOI: https://doi.org/10.3847/1538-4357/ac6cdc
物理科学研究科 天⽂科学専攻 池⽥遼太