電子ビーム熱負荷によるW/Cu/RAFM鋼接合試験体の熱伝導特性評価 Evaluation of heat removal property in W/Cu/RAFM steel joint by using electron beam facility

接合試験体における除熱性能の評価を目的とした熱負荷試験についての概形写真
本研究の熱負荷試験では、電子ビーム照射装置(ACT2)の内部にタングステン(W)と純銅(Cu)、低放射化フェライト鋼(RAFM鋼)の接合試験体(W/Cu/RAFM鋼)を設置し、電子ビームを照射することでW/Cu/RAFM鋼への熱負荷を実施しました。上図は,ACT2内部におけるW/Cu/RAFM鋼の熱負荷試験について示しています。

核融合炉では、核融合反応を起こすために高温・高密度のプラズマを維持することが重要であり、そのプラズマを維持するために不純物等を排気するダイバータがあります。ダイバータは、高温のプラズマを経由した不純物等が付加されるため、効率良く除熱するための受熱機器構造を作成することが必要です。私は現在、タングステン(W)と純銅(Cu)、低放射化フェライト鋼(RAFM鋼)の接合構造(W/Cu/RAFM鋼)を基にした接合試験を実施することで、ダイバータの受熱機器構造に適用するタングステンと低放射化フェライト鋼の接合技術開発を進めています。接合技術の開発手順として、受熱機器構造への適用を想定し、作成したW/Cu/RAFM鋼接合試験体における熱負荷の影響について評価することが重要です。本論文では、作成したW/Cu/RAFM鋼に電子ビーム照射での熱負荷試験を実施することによって、熱負荷に対する接合構造内の除熱性能、および繰り返しの熱負荷による疲労に対する耐久性、等といったW/Cu/RAFM鋼の熱伝導特性について明らかにしています。

本研究では、W/Cu/RAFM鋼の接合試験体における熱伝導特性を評価するため、まず初めに、超高熱負荷試験装置(ACT2)という電子ビーム照射による熱負荷試験装置を用いて、W/Cu/RAFM鋼に0.7~6.0 MW/m2の長時間電子ビーム照射による定常熱負荷試験を実施しました。定常熱負荷試験の結果、熱負荷中に接合試験体内の温度がほぼ一定を維持していたことから、接合構造内の良好な除熱性能が確認できました。次に、熱負荷によって生じる疲労に対する耐久性を調べるため、30秒間の電子ビーム照射による熱負荷後に60秒間の非熱負荷、という1分30秒の試験を1ループとして、100ループの繰り返し熱負荷試験を~2.0 MW/m2および~6.0 MW/m2の熱負荷量で実施しました。~2.0 MW/m2の繰り返し熱負荷試験ではW/Cu/RAFM鋼に亀裂が生じませんでしたが、~6.0 MW/m2の繰り返し熱負荷試験中、接合試験体に亀裂が生成されました。上記の結果から、2.8~6.0 MW/m2までの繰り返し熱負荷に対するW/Cu/RAFM鋼の耐久性が確認できました。

WとRAFM鋼の接合技術が必要とされているダイバータ受熱機器の領域では、5MW/m2程の熱負荷が予測されています。本論文の研究では、0.7~6.0 MW/m2の熱負荷に対するW/Cu/RAFM鋼の熱伝導特性を評価したことから、ダイバータ受熱機器構造を想定した熱負荷試験が実施できていると考えられます。また、今後の研究として、接合手法や接合構造を改善したW/Cu/RAFM鋼の接合試験を行い、本論文でまとめた熱負荷試験によって熱伝導特性評価を実施する予定です。新しく試作したW/Cu/RAFM鋼における熱伝導特性評価結果を本論文でまとめた熱伝導特性評価結果と比較することによって、熱伝導特性の観点から受熱機器構造に適用する接合技術の改善点等を発見できる可能性があります。

書誌情報
  • タイトル:Evaluation of heat removal property in W/Cu/RAFM steel joint by using electron beam facility
  • 著者:T. Yamashita, et al.
  • 掲載誌:Nuclear Material and Energy
  • 掲載年:2022
  • DOI: https://doi.org/10.1016/j.nme.2022.101236

物理科学研究科 核融合科学専攻 山下東洋

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