多波長観測で明らかになった星形成活動の終わりとブラックホールの活動

解析手法の概要
図の背景画像がCOSMOS領域の広域画像で、その上のパネルが本研究で選択した星形成活動を終えた銀河の拡大観測画像。本研究では個別の銀河の観測では観測できないほど微弱な放射を検出するために、スタッキング法と呼ばれるサンプルの平均的な画像を作成する手法を用いて、平均的な放射を検出しました。(クレジット:国立天文台)

銀河は宇宙の歴史の中で、星を作り成長することが知られており、「星形成活動」と呼ばれています。現在の宇宙の楕円銀河は星形成活動を行なっていないことがわかっていますが、なぜこのように成長を止めてしまったのかは解明されていない大きな謎の一つです。この謎を解き明かす鍵の一つは遠方宇宙にあります。星が生まれなくなってしまった頃の銀河の性質を詳細に調べれば、その理由のヒントが見つかるかもしれません。しかしながら、遠方の宇宙での平均的な描像を捉えるには多くの銀河のサンプルが必要でした。そこで、我々は多波長サーベイ COSMOS の探査領域において、星形成活動を終えた銀河をさまざまな波長の光でくまなく調べました。本論文ではスタッキング法という手法を用いることで、X線と電波の平均的な光度を推定することに成功しました。スタッキング法の概要については図を参照ください。加えてこれらの放射は銀河の星の量や星形成率から期待される量よりも強く、銀河中心にある超巨大ブラックホールの活動による放射が主であるとわかりました。現在の宇宙では多くの楕円銀河が活動的な超巨大ブラックホールを持つことが知られていますが、宇宙初期においても、星形成活動を終えようとしている銀河には活動的な超巨大ブラックホールが一般に存在することを本研究は示しています。

書誌情報
  • タイトル:COSMOS2020: Ubiquitous AGN Activity of Massive Quiescent Galaxies at 0 < z < 5 Revealed by X-Ray and Radio Stacking
  • 著者: Kei Ito, Masayuki Tanaka, Takamitsu Miyaji, Olivier Ilbert, Olivier B. Kauffmann, Anton M. Koekemoer, Stefano Marchesi, Marko Shuntov, Sune Toft, Francesco Valentino, and John R. Weaver
  • 掲載誌:The Astrophysical Journal
  • 掲載年:2022
  • DOI:10.3847/1538-4357/ac5aaf

物理科学研究科 天文科学専攻 修了 伊藤慧

学生の研究