宇宙用アレーアンテナへの新しい電力分布実装法

本研究で提案・実証した段階的サブアレー構成素子数増加法の概要
フェーズドアレーアンテナを構成するアンテナ・アンプ・移相器の内、隣り合うアンテナ同士の間隔を均一としアンプを単一種類とすることで大量生産を可能としました。さらにサブアレー構成素子数をアレー全体で中心から端に向けて徐々に大きくすることで、電力伝送効率は従来手法同様に向上できる、新しいマイクロ波電力密度分布の実装方法を提案・実証しました。

宇宙空間で太陽光発電を行い、その電力を地上まで送り利用する宇宙太陽光発電システム(SSPS)が各国で研究されています。SSPSの実現には、図のようにアンテナ・アンプ・移相器を配列(アレー)状に沢山並べ、個々のアンテナから出るマイクロ波の振幅位相をアンプと移相器で制御することで、送電マイクロ波を制御するフェーズドアレーアンテナ(PAA)が必要です。SSPSには大量のアンテナ・アンプ・移相器が必要となるため、高効率であるのと同時に安価に電力伝送用PAAを製造できる構成法が必要不可欠です。しかし従来手法では、多種類のアンプを用いたり、アンテナ間隔を個々に最適位置に置いたりといった事が必要であり、2つの要求を同時に満足する方法がありませんでした。

そこで私はPAAを構成するアンテナ・アンプ・移相器の内、アンテナを均一な配置としアンプを単一種類で構成することで、大量生産を可能とし安価性を確保しました。一方で、複数アンテナをまとめてサブアレー化を施す際、アレー全体の中心から端に向けて、サブアレーを構成するアンテナ素子数を徐々に増加させる事で、アレー全体に電力分布を付加し、電力伝送効率の向上も同時に可能とする方法を提案しました。

これにより従来の約3.4%の価格で、従来と等しい約98.7%という高い電力伝送効率を実現可能なPAA構成手法を新たに提案しました。本研究で提案した手法の技術的有効性は、数値解析と実証実験を行うことにより、多面的な検証および実証を行いました。今後はSSPS用PAA研究の共通課題である、2次元平面アンテナでの数値解析や宇宙空間での熱的な成立性検討を行いたいと考えています。

書誌情報
  • タイトル: 軌道上大面積電力伝送用フェーズドアレーアンテナへの段階的サブアレー構成素子数増加法を用いた電力分布実装
  • 著者: 片野将太郎, 牧謙一郎, 水野貴秀(全員、宇宙科学専攻)
  • 掲載誌: 航空宇宙技術
  • 掲載年月:2021
  • DOI: https://doi.org/10.2322/astj.20.125

物理科学研究科 宇宙科学専攻 修了 片野将太郎

学生の研究