マメの根における土壌細菌との共生を制御する葉由来のマイクロRNA

miR2111の作用機序のモデルと、野生型とmiR2111過剰発現体の根粒の写真。
マメ科植物は、根粒 (コブ状の器官)を増加させる機能を持つ、葉由来のmiR2111量を、土壌中の栄養素や根粒菌感染に応じて変化させることが近年の研究によりわかってきた。このシステムによって、マメ科植物は、変動する土壌栄養環境下で根粒の数を適切に保っていると考えられている (画像左)。実際に、miR2111を過剰に産生するように遺伝子操作を行った組み換え体 (miR2111過剰発現体)では、遺伝子操作を加えていない野生型に比べて、根粒の数が増加する (画像右の写真)。

植物は、土壌中の窒素やリン酸などのミネラルを、バランス良く吸収・同化することで生長をしています。一方で、それらの土壌中の利用可能な栄養の量は常に一定ではないため、植物は、それらの存在量の情報を各器官に伝達することで栄養獲得を最適化しています。その情報伝達を担う分子として、葉–根間を長距離伝達するマイクロRNA(miRNA)が重要な役割を持つ可能性が示唆されていましたが、その詳細な分子メカニズムを示した例は殆どありませんでした。近年、葉から根に移動するmiRNAの一つである、miR2111に関して、マメ科植物と土壌中の窒素固定細菌・根粒菌との相利共生を保つ機構を例にして、詳細な研究が進められています (画像)。マメ科植物は、根に根粒と呼ばれる特殊な器官を形成することで根粒菌と共生し、多くの植物が利用できない大気中の窒素を栄養源として利用することがきます (画像)。一方で、マメ科植物は、根粒へ多量の光合成産物を供給する必要があるため、植物にとって窒素栄養が十分である条件では、根粒の数を制限することで栄養獲得を最適化しています。近年、このシステムでは、根粒菌の感染や土壌中の栄養素に応答して、根粒形成を促進する機能を持つmiR2111(画像)の葉から根へ移行する量を調整することで根粒の数を制御していることが次々と明らかになってきました。本総説では、マメ科植物の長距離シグナルであるmiR2111が、変動する土壌栄養環境での根粒共生制御にどのような役割をもち、また今後何を明らかにすべきかについて解説しました。

書誌情報

タイトル: Systemic optimization of legume nodulation: a shoot-derived regulator, miR2111

著者: Nao Okuma, Masayoshi Kawaguchi

掲載誌: Frontiers in plant science

掲載年月:Published in 15, July, 2021

DOI: https://doi.org/10.3389/fpls.2021.682486

生命科学研究科 基礎生物学専攻 大熊 直生

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