負の温度勾配がフィラメント状分子雲の平衡状態に及ぼす影響
October 7, 2021
研究論文助成事業
SOKENDAI Publication Grant for Research Papers
採択年度:
program year:
天文科学専攻
Astronomical
柏木 頼我
天文科学コース
Magnetohydrostatic Equilibrium Structure and Mass of Polytropic Filamentary Cloud Threaded by Lateral Magnetic Field
掲載誌:
journal:
The Astrophysical Journal, Volume 911, Issue 2, id.106, 15pp.
発行年:
publish year:
2021
DOI:
10.3847/1538-4357/abea7a

星は分子雲という主に水素分子ガスで構成された天体の内部で形成されると考えられています。近年の観測から、その分子雲内部の高密度領域が細長いフィラメント状に存在し、そのフィラメントに沿って星が誕生していることが発見されました。加えて、フィラメントを垂直に貫くような磁場の存在が示唆されています。星形成過程を理解するためには、磁場に貫かれたフィラメントの性質を理解する必要があります。理論研究として、重力、熱圧、磁気圧の釣り合ったフィラメントの平衡状態を調べることは、フィラメントからゆくゆくは星へと進化する初期条件を知ることにつながります。
これまでの先行研究では、天体のガスの温度を等温と仮定したモデルが使われていました。平衡状態におけるフィラメントの半径方向のガス密度構造に注目した場合、等温モデルから求めた柱密度分布(視線方向に密度を積分した値)では、観測結果よりも分布の裾野が急な傾きになり、観測される構造を再現できない問題がありました。
しかし、観測からフィラメント中心に向かってガス温度が下がる負の温度勾配が示唆されていました。 そこで、本研究では負の温度勾配を新たに考慮した中心低温モデルの数値計算により平衡状態を求め、負の温度勾配がガス密度構造へ及ぼす影響を調べました。
結果、中心低温モデルの方が等温モデルよりも、観測結果の特徴を再現できることがわかりました。本研究から、より現実的なフィラメントの半径方向の構造を求めることができました。今後は、シミュレーションにより、このフィラメントの時間進化を調査し、フィラメントからどの様に星へと進化するのか明らかにしていく予定です。
書誌情報
- タイトル: Magnetohydrostatic Equilibrium Structure and Mass of Polytropic Filamentary Cloud Threaded by Lateral Magnetic Field
- 著者: Kashiwagi, R. & Tomisaka, K
- 掲載誌: The Astrophysical Journal, Volume 911, Issue 2, id.106, 15pp.
- 掲載年月: April 2021
- DOI: 10.3847/1538-4357/abea7a
物理科学研究科 天文科学専攻 柏木 頼我