負の温度勾配がフィラメント状分子雲の平衡状態に及ぼす影響

本研究の計算結果の例:平衡状態のフィラメント(左)と、その柱密度分布
図左側は、計算結果である磁気静水圧平衡状態を表しています。平たい円柱は平衡状態のフィラメントを表し、等高線は等密度の箇所を結んだもので、中心に向かって密度は高くなっています。フィラメントを貫く線は磁力線を表しています。右側は、x軸方向(破線)とy軸方向(実線)から模擬観測した柱密度図になります。この柱密度図は視線方向に密度を積分することで得られる柱密度をフィラメントの半径(短軸)方向に測定したものです。中心に向かって温度が下がる中心低温モデル(青色)の方が等温モデル(灰色)に比べ、x,y軸方向とも裾野がゆるやかになることが分かりました。

星は分子雲という主に水素分子ガスで構成された天体の内部で形成されると考えられています。近年の観測から、その分子雲内部の高密度領域が細長いフィラメント状に存在し、そのフィラメントに沿って星が誕生していることが発見されました。加えて、フィラメントを垂直に貫くような磁場の存在が示唆されています。星形成過程を理解するためには、磁場に貫かれたフィラメントの性質を理解する必要があります。理論研究として、重力、熱圧、磁気圧の釣り合ったフィラメントの平衡状態を調べることは、フィラメントからゆくゆくは星へと進化する初期条件を知ることにつながります。

これまでの先行研究では、天体のガスの温度を等温と仮定したモデルが使われていました。平衡状態におけるフィラメントの半径方向のガス密度構造に注目した場合、等温モデルから求めた柱密度分布(視線方向に密度を積分した値)では、観測結果よりも分布の裾野が急な傾きになり、観測される構造を再現できない問題がありました。

しかし、観測からフィラメント中心に向かってガス温度が下がる負の温度勾配が示唆されていました。 そこで、本研究では負の温度勾配を新たに考慮した中心低温モデルの数値計算により平衡状態を求め、負の温度勾配がガス密度構造へ及ぼす影響を調べました。

結果、中心低温モデルの方が等温モデルよりも、観測結果の特徴を再現できることがわかりました。本研究から、より現実的なフィラメントの半径方向の構造を求めることができました。今後は、シミュレーションにより、このフィラメントの時間進化を調査し、フィラメントからどの様に星へと進化するのか明らかにしていく予定です。

書誌情報
  • タイトル: Magnetohydrostatic Equilibrium Structure and Mass of Polytropic Filamentary Cloud Threaded by Lateral Magnetic Field
  • 著者: Kashiwagi, R. & Tomisaka, K
  • 掲載誌: The Astrophysical Journal, Volume 911, Issue 2, id.106, 15pp.
  • 掲載年月: April 2021
  • DOI: 10.3847/1538-4357/abea7a

物理科学研究科 天文科学専攻 柏木 頼我

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