宇宙の始まりを見るPOLARBEAR-2望遠鏡

POLARBEAR-2望遠鏡
チリのアタカマ高地に建設したPOLARBEAR-2望遠鏡。高さは約9mあります。アタカマ高地は砂漠ですが高山のため気温は0℃前後。酸素は低地の約半分で酸素ボンベを背負って作業します。紫外線が非常に強いのでサングラスとSPF 100以上の日焼け止めが欠かせません。

138億年前の宇宙はビッグバンという高温高圧状態にありました。最近の宇宙論研究によると、ビッグバンの前にインフレーションと呼ばれる急激に空間が膨張した瞬間があったという説が提唱されています。インフレーションとは10-36秒の間に宇宙が1026倍になる途方もないスケールの膨張です。このインフレーション理論は、ビッグバン理論だけでは説明できない現象を解決できる優れた理論なのですが、今のところ確たる証拠はありません。その証拠を、宇宙を観測して見つけるのがPOLARBEAR-2望遠鏡です。

 研究のキーワードはCMBです。これはCosmic Microwave Background の略で日本語では「宇宙マイクロ波背景放射」と言います。このCMBは宇宙で最も古い光であり宇宙の全方向からやってきています。インフレーションによって宇宙空間が急激に膨張した際の、ほんのわずかな膨張のゆらぎがCMBをほんのわずかに偏光させます。POLARBEAR-2望遠鏡はCMBの偏光を検出できる特別な望遠鏡です。もしCMBの中に理論的な予測と一致する特殊な偏光パターンが見つかると、インフレーションの証拠を発見したことになります。同じような研究をするプロジェクトは世界に10個ぐらいあり、世紀の大発見の一番乗りを目指してしのぎを削っています。

 POLARBEAR-2望遠鏡は2018年末に南米チリのアタカマ高地に建設しました。アタカマ高地は標高5200mにある砂漠で、晴れた日が多く空気が乾燥しているので宇宙の観測に適しているのです。現在のPOLARBEAR-2望遠鏡は最終調整の段階で、2020年に本番観測の開始を予定しています。

派遣先滞在期間

9/Oct/2019 - 11/Nov/2019

国、機関名

POLARBEAR Observatory

派遣中に学んだことや得られたもの

現地での先行作業の遅れにより、派遣の目的としていたリハーサル観測はできませんでしたが、そのおかげで共同研究者のほかの作業を手伝うことができました。POLARBEAR-2は将来的には同型の望遠鏡をあと2台建設し、3台体制で観測する予定です。その2台は現在建築途中であり、1台目の建設のときには立ち会えなかった初期段階の作業に関わることができました。


高エネルギー加速器研究科  素粒子原子核専攻 瀬川 優子

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