オスとメスで異なる選択が働くことによる新たな性決定遺伝子の定着

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自然選択の働き方と、新たなオス決定遺伝子の定着確率

(A) 性拮抗選択を受ける特徴の例。地味な体色になる遺伝子型は、敵にみつかりにくくなるため、メスで有利である。一方、派手な体色になる遺伝子型は、よりメスにモテるようになるため、オスで有利である。(B) 近くにある性拮抗遺伝子でどのような自然選択が働くかにより、定着確率は大きく異なる。オスとメスで有利な遺伝子型が集団中に共存している場合に、定着確率は高くなる。一方、どちらかの遺伝子型が集団中に優占しているときには定着確率が低く、特にオスで有利な遺伝子型が優占している場合には、著しく低くなる。


生物の性決定システムは多様です。哺乳類や鳥類では、特殊化した1対の性染色体により性が決まります。一方で、魚類や両生類の中には、1つの性決定遺伝子により性が決まる例が多く見られます。これらの分類群では、性決定遺伝子はしばしば種間で異なり、頻繁に移りかわることが分かっています。しかし、性決定遺伝子の交替がどのように起こるのかはよく分かっていません。有力なメカニズムとして、オスとメスで異なる遺伝子型が好まれるような選択 (性拮抗選択)が提案されています (図A)。もし新たなオス化遺伝子がオスで有利な遺伝子の近くに生じると、性とその性で有利な遺伝子が強く結びつくことで自然選択により好まれ、性決定遺伝子の交替が起こります。本研究では、このメカニズムにおいて交替がどのように起こるのかについて、確率的なモデルを構築・解析することで理論的に記述しました。

新たな性決定遺伝子が集団に定着する確率を、性拮抗選択の関数として求めました(図B)。オスとメスで有利な遺伝子型が集団中に共存するような性拮抗選択が働くとき、定着確率が高いことが分かりました。また、このような選択により交替が起こった後には、ゲノム上に特徴的な痕跡が残ることを、シミュレーションにより明らかにしました。

本研究の理論的予測と、実際のデータを比較することで、性決定遺伝子の交替がどのように起こるのかを明らかにできると考えています。

書誌情報
  • タイトル: Establishment of a new sex-determining allele driven by sexually antagonistic selection
  • 著者: Takahiro Sakamoto and Hideki Innan
  • 掲載誌: G3
  • 掲載年 2021
  • DOI: https://doi.org/10.1093/g3journal/jkaa031

先導科学研究科生命共生体進化学専攻 坂本貴洋

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