視覚から探るウミヘビの海生適応

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ウミヘビの視覚の海中の光環境への適応
ウミヘビの祖先は陸生の種から進化し、陸に比べて青い光だけが占める深場や沖合に適応した。その際に長波長(緑から黄色)の光を見るときに必要なタンパク質が、短波長側(青側)の光がよく見えるように適応的に進化してきた。


進化の歴史の中で陸生の祖先種から海の環境へと適応した生物はたくさんいますが、その一生を海の中だけで過ごす完全な海生を獲得した生物種は3分類群(クジラの仲間、マナテーの仲間、ウミヘビの仲間)に限られます。陸上に比べ海中では見える光が大きく制限されるため、光の受容器であるそれらの視覚も海中環境に適応しています。

完全な海生哺乳類のクジラやマナティーの仲間では視覚の適応について詳しく研究されていましたが、進化史において陸にも上がる海生種であった両生の生物種は絶滅していて、陸生から海生への詳細な適応のプロセスは議論されていました。その点ウミヘビは両生の種と完全海生の種が現存するため、海生適応の研究モデルとして両者の生物的特徴を比較できる優れた特徴を持っています。しかし、他の完全海生の2グループより人気がなく、分子生物学的アプローチによる研究は遅れていました。

本研究では陸生の近縁のヘビ種から両生・完全海生のウミヘビ種を用いて、視覚の海生適応に注目し、眼の中で光を受容する視物質を構成するタンパク質(オプシン)について研究しました。その結果、色覚を担う長波長の光受容に関わるLWSオプシンについて、深場に潜る可能性のある両生種と沖合に生息する完全海生種の系統で、深場や沖合といった環境の光のほとんどを占める青い光をよく吸収するように独立に進化したこと(収斂進化)を解明しました。これらは生息する環境の光をより良く見えるために適応したためと考えられます。本研究により陸生から海生への視覚の海生適応プロセスについての新たな知見が増えました。

書誌情報
  • タイトル: Visual adaptation of opsin genes to the aquatic environment in sea snakes
  • 著者: Takashi Seiko, Takushi Kishida, Mina Toyama, Takahiko Hariyama, Takashi Okitsu, Akimori Wada, Mamoru Toda, Yoko Satta, Yohey Terai.
  • 掲載誌: BMC Evolutionary Biology
  • 掲載年 2020, 20.1: 1-13.
  • DOI: 10.1186/s12862-020-01725-1

先導科学研究科生命共生体進化学専攻 清古貴

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