約120億年前の宇宙の"都会"に住む銀河はより活発に星を生成していたのか?

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本研究で求められた原始銀河団における紫外線光度関数(銀河の明るさの分布)
横軸に明るさ、縦軸にその明るさをもつ銀河の数密度をとった紫外線光度の分布関数です。原始銀河団の分布関数を赤丸、一般的な領域の分布関数を青丸で示しています。原始銀河団の銀河は一般的な領域に比べて、銀河の数が多く(約230倍)、また中でも明るい銀河が多いことがわかります。

宇宙に遍く存在する銀河では内部で星が生成されており、その性質は周りの環境に影響されることが知られています。この「環境効果」は宇宙上で最も銀河が集まっている領域である「銀河団」で大いに見られており、我々の近くの銀河団では星を作っていない銀河が多いことがわかっています。このような銀河団銀河と一般的な銀河の違いの起源を理解するためには、遠方に存在する銀河団の祖先である「原始銀河団」を観測し、銀河団の過去の姿を調べる必要があります。

我々はこれまでに、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper-Suprime Camを使った広い空を網羅するデータによる原始銀河団探査を行ってきました。本研究ではこの探査で発見された約120億年前の原始銀河団に属する銀河の紫外線光度の分布を統計的な手法で調べ、一般的な銀河の分布と比較しました。紫外線光度は銀河がどの程度星を生成しているかを示す、銀河の性質を理解する上で重要な指標です。先行研究との比較の結果、我々が発見した原始銀河団に属する銀河は一般的な銀河に比べ、紫外線で明るい、すなわち星の生成が活発な銀河が有意に多いことが明らかになりました。これは宇宙が誕生して約20億年後という早期の段階において、既に銀河の高密度環境下で通常とは異なる成長過程が見られることを示唆します。

現在他の時代の原始銀河団の探査も行っており、今後は今回の描像が普遍的に見られるのか調査したいと考えています。


書誌情報
  • タイトル: The UV Luminosity Function of Protocluster Galaxies at z?4: The Bright-end Excess and the Enhanced Star Formation Rate Density
  • 著者名: Kei Ito, Nobunari Kashikawa, Jun Toshikawa, Roderik Overzier, Mariko Kubo, Hisakazu Uchiyama, Yongming Liang, Masafusa Onoue, Masayuki Tanaka, Yutaka Komiyama, Chien-Hsiu Lee, Yen-Ting Lin, Murilo Marinello, Crystal L. Martin, and Takatoshi Shibuya
  • 掲載誌名: Astrophysical Journal
  • 掲載年 2020年
  • DOI: https://doi.org/10.3847/1538-4357/aba269

物理科学研究科天文科学専攻 伊藤慧

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