太陽彩層のジェット状構造を伝わる短周期磁気波動の検出に成功

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CLASPが観測したスピキュール(ジェット状構造)
分光観測のためのスリット(中央の黒線)は、スピキュールの構造に沿って位置しています。スピキュールの高さ方向と時間方向の速度変化から、短周期波動の伝播、及び長周期振動が見つかりました。

研究概要

太陽は、表面の光球で温度約6000度、その上部のコロナで約100万度という大気構造をしています。一般に、熱は冷たい媒質から熱い媒質へ流れません。では、コロナを約100万度まで加熱するためのエネルギーはどのように輸送されているのでしょうか。その機構の候補として、光球からコロナへ磁力線に沿って伝播する磁気波動が考えられています。本研究では、光球とコロナの中間層である彩層の至る所で観測される「スピキュール」というジェット状構造(図)の波動現象に注目しました。先行研究からも、スピキュールに沿って伝播する波動が見つかっていますが、波動の速度場を直接観測した研究例が無く、波動の輸送エネルギーがコロナの加熱に十分であるかどうか明らかではありませんでした。

我々は、これを定量的に明らかにするために、2015年9月に実施された観測ロケット実験CLASPにより得られた、0.3秒という今までにない高い時間分解能の分光観測データを用いました。我々が解析した結果、約30秒周期(短周期)と約4分周期(長周期)の速度振動を見つけました。特に短周期振動は、スピキュール形成初期に卓越して上方へ波動として伝播している様子が見つかりました。長周期振動は、波長がスピキュールの長さより長いため、波動として伝播しているかどうか明らかではありません。本研究で見つかった短周期波動の持つエネルギーだけでは、コロナの加熱に不十分であることがわかりました。今回の観測は空間分解能が十分でなく短周期波動の持つエネルギーが過小評価された可能性が考えられます。現在、日本で計画されている太陽観測衛星では彩層とコロナを同時に高い空間分解能で観測する予定です。今後の観測によって短周期と長周期それぞれの伝播が捉えられ、コロナ加熱への影響を更に詳しく調べられることが期待されます。



書誌情報

物理科学研究科天文科学専攻, 吉田正樹

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