種の違いを決める遺伝子が引き起こす特徴的なゲノムの進化

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種が分かれる初期段階におけるゲノム進化の模式図
(上図) 近縁な種では、しばしば種の違いは少数のゲノム領域における遺伝的な違いにより決まる。 (下図) 種の違いを決める遺伝子座の近くでは、著しく種間のゲノムが異なっている。ゲノムがどの程度異なるかは、種の違いを決める遺伝子の進化の過程による。
研究概要

新しい種がどのように生まれるのかは、進化生物学の大きな謎の一つです。近年、さまざまな近縁な種間でDNA配列が解読されています。その結果、種間でゲノムが著しく異なっている領域があることが分かってきました。このような領域は、種の違いを決める重要な遺伝子の周囲にできると考えられています。しかし、種の違いを決める遺伝子が、どのようなゲノムの進化を引き起こすのかを理解するためには、理論研究によって進化のプロセスを追うことが必要です。今まではそのような理論がなかったため、観察されたゲノムデータの解釈が難しくなっていました。

本研究では、数理的なモデルを解くことで、種の違いを決める新たな遺伝的変異ができたときに、ゲノムがどのように進化するのかを数学的に記述しました。これにより、種が分かれる初期段階でのゲノムの詳細な進化プロセスが明らかになりました。実際の集団のデータを本研究の理論を基に解釈することで、種の違いを決める遺伝子がどのように進化してきたのかを推定できると考えられます。

本研究の理論はDNAの進化を記述したもので、非常に幅広い生物種に適用できるものです。今後は、さらに種が分かれる段階が進んだときに、ゲノムがどのように進化するのかを理論的に明らかにしたいと考えています。



書誌情報
  • Takahiro Sakamoto, and Hideki Innan. "The Evolutionary Dynamics of a Genetic Barrier to Gene Flow: From the Establishment to the Emergence of a Peak of Divergence." Genetics (2019)
  • DOI: https://doi.org/10.1534/genetics.119.302311

生命共生体進化学専攻, 坂本貴洋

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