種の違いを決める遺伝子が引き起こす特徴的なゲノムの進化
June 10, 2020
研究論文助成事業
SOKENDAI Publication Grant for Research Papers
採択年度:
program year:
2019
生命共生体進化学専攻
Evolutionary Studies of Biosystems
坂本貴洋
統合進化科学コース
The Evolutionary Dynamics of a Genetic Barrier to Gene Flow: From the Establishment to the Emergence of a Peak of Divergence
掲載誌:
journal:
Genetics
発行年:
publish year:
2019
DOI:
10.1534/genetics.119.302311

研究概要
新しい種がどのように生まれるのかは、進化生物学の大きな謎の一つです。近年、さまざまな近縁な種間でDNA配列が解読されています。その結果、種間でゲノムが著しく異なっている領域があることが分かってきました。このような領域は、種の違いを決める重要な遺伝子の周囲にできると考えられています。しかし、種の違いを決める遺伝子が、どのようなゲノムの進化を引き起こすのかを理解するためには、理論研究によって進化のプロセスを追うことが必要です。今まではそのような理論がなかったため、観察されたゲノムデータの解釈が難しくなっていました。
本研究では、数理的なモデルを解くことで、種の違いを決める新たな遺伝的変異ができたときに、ゲノムがどのように進化するのかを数学的に記述しました。これにより、種が分かれる初期段階でのゲノムの詳細な進化プロセスが明らかになりました。実際の集団のデータを本研究の理論を基に解釈することで、種の違いを決める遺伝子がどのように進化してきたのかを推定できると考えられます。
本研究の理論はDNAの進化を記述したもので、非常に幅広い生物種に適用できるものです。今後は、さらに種が分かれる段階が進んだときに、ゲノムがどのように進化するのかを理論的に明らかにしたいと考えています。
書誌情報
- Takahiro Sakamoto, and Hideki Innan. "The Evolutionary Dynamics of a Genetic Barrier to Gene Flow: From the Establishment to the Emergence of a Peak of Divergence." Genetics (2019)
- DOI: https://doi.org/10.1534/genetics.119.302311
生命共生体進化学専攻, 坂本貴洋