すばる望遠鏡による約120億年前の銀河団の祖先に住む最も明るい銀河

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原始銀河団とその内部の最も明るい銀河: 色は銀河の密度を示し、赤い色ほどその場所での銀河の密度が高いことを示します。白点が銀河、赤い星印が原始銀河団中で最も明るい銀河を示します。

研究概要

銀河には、渦巻き型銀河をはじめ、楕円型銀河など、様々な形そして物理的諸性質を持つものがあります。いつどのようにこの多様な銀河が形成されたのかは未解明の大きな問題であり、研究が進められてきました。これまでに、銀河の性質にはその形成時の周辺環境が大きく影響すること、特に銀河団中で最も質量が大きい中心銀河はこの影響を強く受け、一般的な銀河とは異なる性質を持つことが知られていました。この特定の銀河の形成進化を理解するためには、実際に宇宙の初期に存在した祖先を観測して、その性質を調べることが一つの方法です。しかし宇宙初期の銀河を捉えるには、巨大な望遠鏡での長時間にわたる観測が必要となるため、これまでは探査対象となる銀河団の祖先「原始銀河団」の発見数が少なく、上記の謎の解明は困難でした。この状況の中、近年すばる望遠鏡では巨大なカメラHSC (Hyper Suprime-Cam)を用いた大規模撮像サーベイ計画が始まりました。この初期公開データから先行研究では約120億年前 (注1) に存在した原始銀河団を既存のサンプルの約10倍にあたる179個発見しました。

本論文ではこのサンプルの中から、近傍銀河団中で最も質量が大きい中心銀河の祖先の候補と考えられる、最も明るい銀河 (注2) に着目し、その形成に関して議論しました。統計的手法を用いた分析の結果、この銀河は、一般的な銀河とは特にダストの量とサイズという点で差異があることがわかりました。これらの結果は120億年前という宇宙初期において、既に環境による銀河の性質の差異が生じていた可能性を示します。

我々の原始銀河団探査は現在も進行中であり、将来的にはこのような最も明るい銀河の性質がいつ生じたのかをたどっていきたいと考えています。

注1: 宇宙の誕生は約138憶年前と考えられています。 注2: 静止系紫外線で有意に最も明るい銀河



書誌情報
  • 掲載誌名: Astrophysical Journal
  • 出版年月日 2019年6月14日
  • 著者名: Kei Ito, Nobunari Kashikawa, Jun Toshikawa, Roderik Overzier, Masayuki Tanaka, Mariko Kubo, Takatoshi Shibuya, Shogo Ishikawa, Masafusa Onoue, Hisakazu Uchiyama,Yongming Liang, Ryo Higuchi, Crystal L. Martin, Chien-Hsiu Lee, Yutaka Komiyama, and Song Huang
  • DOI: 10.3847/1538-4357/ab1f0c

物理科学研究科天文科学専攻 伊藤慧

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