英国人作家アンガス・ウィルソンと日本小説 ― その出会いと翻訳が拓く可能性を解き明かす―

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ウィルソン肖像写真
二度目の来日の頃の肖像写真。これまでの研究では、ウィルソンと英語圏における日本小説の紹介との関わりは見逃されてきました。(Angus Wilson by Godfrey Argent, bromide print, 17 September 1969, NPG x166054 c National Portrait Gallery, London)

研究概要

 翻訳を通じて異なる文化圏に伝わった日本文学が、移植先の作家たちにインスピレーションを与え得るとするならば、彼らはそのいかなる部分に魅せられ、またどのような刺激を受けるのでしょうか。この研究では、同時代の日本の小説に惹きつけられ、触発されたイギリスの小説家アンガス・ウィルソン(1913-1991)に焦点を当てています。

 これまでウィルソンについては、主に英文学の観点から研究がなされてきました。しかしこの研究では、異文化の接触や相互理解という観点を加えることにより、従来の研究では明かされることのなかった、ウィルソンと日本の小説との関わりを解明しています。ウィルソンは、1957年に日本で開催された国際ペン大会への参加を機に、本格的に日本の小説に興味を抱くようになりました。その後、書評で日本の小説の英訳を多数取り上げるなど、英語圏における同時代の日本小説の紹介に大きく貢献していた姿が、この研究を通じて徐々に明らかになりつつあります。この度の研究派遣では、ウィルソンの直筆資料や彼の所蔵していた資料の閲覧調査の他、彼の執筆した論文、記事なども併せて幅広く閲覧・収集しました。その結果、ウィルソンの日本の小説への関心が、記事や論文等で幾度も言及するのにとどまらず、日本の小説に関する講演内容を構想するほどに強いものであったことが、新たに判明しました。

 今後の研究では、調査・収集した資料や、小説の分析・考察を通じて、彼と同時代の日本小説との関わりを具体的に描き出していきたいと考えています。研究成果は、日本研究、翻訳学、比較文学、英文学などの分野に限らず、異文化接触や異文化相互理解について考えるうえで、大きな一助になるものと期待しています。

SOKENDAI研究派遣での実施内容

訪問先①:SOAS (School of Oriental and African Studies), University of London【イギリス】―派遣期間(6月20日―7月28日、8月3日―8月19日)、2ヶ月

訪問先②:University of Macau【中国】―派遣期間(7月29日―8月3日)、1週間

派遣期間中は、ウィルソンが同時代の日本の小説をどう捉えていたのかを解明する手がかりとなる資料を多数収集することができました。閲覧した資料には、ウィルソンにまつわる直筆資料や旧所蔵資料、そして、彼の執筆した論文・記事、講演記録などが含まれます。また、派遣期間中に参加した国際比較文学会の世界大会では、研究成果の一部を報告すると共に、国際学会でパネル発表の司会を務めるという貴重な経験を得ることができました。

国際日本研究専攻,片岡真伊

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