小さな粒子のエネルギーを精密に測る -ILC実験における光子のエネルギー較正-

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ILC加速器の概観
国際リニアコライダー(ILC)の概観。電子とその反粒子である陽電子のビームを生成しDumping Ring(ダンピングリング)で整えます。それぞれのビームをMain Linac(主線形加速器)で加速して衝突させると、電子と陽電子は消滅して純粋なエネルギー状態になります。そこから生まれるヒッグス粒子などの様々な粒子を精密測定することによって新しい物理を探究します。

 国際リニアコライダー(ILC)計画は最高エネルギーで電子とその反粒子である陽電子を衝突させる実験計画です。粒子と反粒子が出会うと消滅し、粒子と反粒子が持っていたエネルギーを使ってヒッグス粒子などの様々な粒子が生まれます。2012年に発見されたヒッグス粒子の正体は未だ謎に包まれており、ヒッグス粒子は1種類しかないのか、またヒッグス粒子はそれ以上分割できない粒子なのか、あるいはもっと細かい素粒子が組み合わさってできた粒子なのか、解明されていません。ILC実験を行うことでヒッグス粒子が他の素粒子とどれくらいの確率で反応するかを精密に測定することによって、これらの謎に関するヒントがつかめると期待されています。ヒッグス粒子は生まれるとすぐに多数の別の粒子に崩壊します。ヒッグス粒子の性質を精密に調べるにはそれらの粒子を精密測定する必要があります。この目的のためILD(International Large Detector)測定器が提案されています。ILD測定器は電子と陽電子の衝突点を取り囲むように設置され、電子陽電子衝突反応で生成された荷電粒子(電気を帯びた粒子)や中性粒子(電気的に中性な粒子)の運動量やエネルギーを精密に測定します。私の研究ではILD測定器による中性粒子の大半を占める光子のエネルギー測定の較正(測定の誤差を修正すること)に関する新しい方法を提案し、それに関する詳細なシミュレーションを行いました。その結果光子のエネルギー較正が十分な精度で行えることが分かりました。この較正を行うことによって、ILC実験において光子のエネルギーの測定誤差を小さくすることができ、より精密に実験を行うことができます。今後は光子とは別の粒子の較正方法についても検証したいと考えています。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 2019年11月15日
Date of Return: 2019年11月23日

国、機関名

マレーシア、クチン
14TH ASIA-PACIFIC PHYSICS CONFERENCE (APPC 2019)

発表題目

A simulation study of the e+e- to gamma Z process for design optimization of the International Large Detector

派遣中に学んだことや得られたもの

 私はマレーシアのクチンで開催されたアジア太平洋物理会議(APPC)に参加しました。そこで私はILC実験における光子のエネルギー測定について新しい較正方法を提案し、その有効性について発表しました。講演には多数の海外の研究者が参加しており、私の研究の意義に加えて国際リニアコライダー(ILC)計画の重要性を広く発信することができました。
 学会では理論に関する講演が多く行われ、それらを聞くことによって研究分野に関する知見が広がりました。 
 会議が開催された街クチンは多民族都市であり、大部分の人間は母国語の他に英語を習得していました。現地の人々と英語で交流することによって英語能力を向上させることができました。

 

高エネルギー加速器科学研究科 素粒子原子核専攻,水野貴裕

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