電波望遠鏡の性能を引き出す高精度温度モニターの開発

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温度モニターデータ活用のイメージ
宇宙からやってきた電波は、反射鏡や検出器、電子回路を通って電流の信号に変換され、コンピュータに読み取られる。途中の装置の温度変化によって信号も影響を受けるため、温度モニターによってそれを補正する。
研究概要の紹介文

屋外に置いた電波望遠鏡を用いる宇宙観測では、高性能な装置を搭載しても、気温や天気の変化が装置に影響し、観測した電波の信号が歪んでしまうことがあります。特に、ビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射の観測実験では、検出器の感度や搭載個数が近年急速に向上しているため、その性能を十分に発揮するためのモニターシステムがより重要になります。電波を直接受ける検出器は超低温に保たれる必要があるため、これまでにも温度や信号強度をモニターする方法が研究されてきました。一方、常温部分の装置の温度をモニターした例は報告されていませんでした。しかし、最新の実験が目標とする観測精度を達成するためには、望遠鏡に設置されている常温の反射鏡についても温度をモニターし、検出器の信号の変動を補正する必要があります。

本研究では、宇宙マイクロ波背景放射の観測実験であるに用いる温度モニターシステムの開発を行いました。温度計として、安価で温度に敏感な抵抗体であるサーミスタを用い、多数の温度計の抵抗を高速で読み取れる装置を選定して望遠鏡に搭載し、1℃の分の以下の温度変動を検出できることを確認しました。このシステムを用いて、は観測データを詳細に分析し、宇宙誕生の理論や素粒子の標準理論を検証することを目指します。

本研究は、宇宙マイクロ波背景放射の観測実験において、検出器の信号を補正するために反射鏡の温度をモニターする試みとしては世界初のものであり、高精度な宇宙観測を目指す実験に広く応用できると期待されます。

A) 訪問先・期間
訪問先:チリ POLARBEAR観測サイト
期間:2019年10月16日~2019年11月9日

B) 派遣によって学んだことや得られたもの
チリへの派遣により、観測の現場で装置への理解を深めることができたことはもちろんですが、観測スケジュールや装置の維持管理について海外の共同研究者と議論し、主導的な立場で観測所の維持管理に関わる機会が得られたことが有意義でした。また直接研究に関わらない部分でも、標高5,000メートルを超える高山地域での過ごし方やスペイン語でのコミュニケーションなど、新たな経験を楽しむ胆力を鍛えることができました。

素粒子原子核専攻,田邉大樹
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自己紹介:総合研究大学院大学高エネルギー加速器研究科素粒子原子核専攻5年一貫博士課程4年。高エネルギー加速器研究機構にて、宇宙マイクロ波背景放射観測実験POLARBEAR-2およびSimons Arrayに参加している。趣味は奥多摩ツーリング。好きな作家は高橋弥七郎。

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