音楽劇団とラジオ局の活動を通してみるマイノリティの音楽文化の形成―社会主義期のモンゴル国のカザフ人を例に

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カザフの民族楽器ドンブラを演奏する筆者(2018年10月カザフスタン国営放送のテレビ番組の収録にて)

民族マイノリティの音楽は、彼らが属する国の影響だけではなく、国際関係やモノの流通など種々の要因を受けて演奏されます。モンゴル国では、ソ連の統治下にあった70年間の社会主義期に独自の民族政策がしかれ、集団の識別と民族文化の体系化(音楽を例にするならば、民族音楽の収集とその曲の楽譜化)が行われました。モンゴル国の首都から1700キロメートル西部にあるバヤンウルギー県には、マイノリティ集団としてのカザフ人が約10万人集住しています。彼らに関する研究では、モンゴル国のカザフ文化はバヤンウルギー県という国家の周縁に位置するために維持・継承されてきたと言われてきました。

私は、バヤンウルギー県での計3年間のフィールドワークを通じて、社会主義期に設立された音楽劇団とラジオ局の活動に注目しました。音楽劇団の演奏者として活動する傍ら、ラジオ局で昔のラジオ音源のデジタル化の活動に参加することで、過去の音楽史を検討しました。その結果、次のようなことがわかりました。まず、1960年代以降の中ソ対立などの国際関係の中で 、モンゴル国政府やソ連が、バヤンウルギー県を戦略的に重要な地域として位置づけ ました。そして、音楽家や磁気テープがバヤンウルギー県に集められて 、モンゴル国のカザフ音楽が継承されました。加えて、社会主義期のカザフ音楽が体系化されることで、マイノリティであるモンゴル国のカザフ人の音楽が、他国のカザフ音楽と差異化されたこともわかりました。

本研究は、社会主義期のマイノリティの音楽の形成を議論する際の重要なケーススタディとなることが期待されます。



Asian Ethnicity, Published on May 25, 2019, Systematization of Kazakh music in Mongolia: Activities of Theater and Radio Station during the Soviet era(Doi: 10.1080/14631369.2019.1635433)

文化科学研究科 比較文化学専攻 八木風輝

カザフ音楽の演奏者として、中央アジア地域でフィールドワークを行う。2019年秋から松下幸之助志財団国際スカラシップを得て、モンゴル国科学アカデミー歴史考古学研究所客員研究員として留学予定。

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